【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社文庫)「第六章」検証第1回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『遠海事件』は、詠坂雄二の代表作というか、主要キャラの佐藤誠が主人公で、他作品へのクロスオーバーが多く、他の作品を読む前に是非呼んでいただきたい一冊になります。
今回から「第六章」になります。佐藤誠の自白から始まります。
今回の1回目は事件の二年半後、阿比留の元へ佐藤誠が自白したと、警視庁捜査一課の沢木から電話がかかってきた場面です。
沢木は『ドゥルシネーアの休日』にも出てきます。タンポポの捜査責任者です。
以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。
【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
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「第六章」#1
【文庫→四六判】相手は警視庁刑事部捜査一課の沢木と名乗り、(p176)→相手は若い声で警視庁刑事部捜査一課の沢木と名乗り、
【文庫→四六判】よくある名前だとまず思った。(p176)→よくある名だとまず思った。
【文庫→四六判】なのにその響きはどこかに引っかかって芯のようなものを残し、脳裏にふわふわと漂い続けた。(p176)→なのにその響きはどこかへ引っ掛かり、芯のようなものを残して、脳裏にふわふわといつまでも漂い続けた。
【文庫→四六判】「あぁ、あれの発見者だったか。……それが今ごろどうした?(p176)→「―あぁ、あれの発見者だったか。……で? それが今頃どうした?
【文庫→四六判】いつまで経っても口になじまない言葉だと思うと、かつて会った佐藤誠の姿が蘇ってきた。(p177)→いつまで経っても口に馴染まない言葉だと思うと、二年半前の事件で出会った佐藤誠の姿が鮮明に蘇ってきた。
【文庫→四六判】痩せた躰と印象の薄い眼が感情の起伏を曖昧にしていて、軽い雰囲気を全身に備えていた書店員。(p177)→痩せた体付きで身長はそこそこあり、細い両眼が感情の起伏を曖昧にして、軽い印象を全身へ備えていた書店員。
【文庫→四六判】そこでようやく相手が疲れていることに阿比留は気が付いた。(p177)→そこでようやく、相手が疲れていることに阿比留は気付いた。
【文庫→四六判】県境を跨いだ同業への出方を考えているためだけではないらしい。(p177)→県境を跨いだ同業への出方を量っている為だけではないらしい。
【文庫→四六判】「佐藤誠本人の口から、二年半前の事件の捜査員が阿比留さんだと教えられたのです。(p177)→「実を言うと、佐藤誠本人の口から、二年半前の事件の捜査員があなただと教えられたのです。
【文庫→四六判】自宅へかけさせていただいたという次第で」(p177)→自宅へ掛けさせていただいたという次第でして」
【文庫→四六判】明日を待てないほど急いでいるのか。そう考えて不審に思う。(p177)→明日を待てない程に急いでいるのか。そう考え、不審に思う。
【文庫→四六判】自白したのならゆっくり裏付けを取ればいい。(p177)→自白したのなら、少しくらい裏付けを遅らせても問題はないはずだ。
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ご覧いただきありがとうございました。
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