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2020年8月9日日曜日

『遠海事件』「第五章」#15 物語への嫌悪

【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社文庫)「第五章」検証第15回



今回は「第五章」15回目です。
引き続き佐藤と水谷も会話で、なりたいものは見つかったのかという話です。
その会話の中で佐藤と出会って良かったと水谷は思っています。

句読点や語尾の訂正も多いので会話のテンポがよ良くなってる印象です。

以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。




【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。

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「第五章」#15


【文庫→四六判】なんてねと付け加えて彼は歩き出した。負け犬の遠吠えだけど実感だ、と。(p157)→なんてねと付け加え、彼は歩き出す。負け犬の遠吠えだけどさ、実感だ、と。

【文庫→四六判】「頷けないにしても、覚えておくといざという時に心強いぞ」(p157)→「頷けないにしても、覚えておくと、どん底へ落ちた時に心強いぞ」

【文庫→四六判】水谷は全身にざわつきを感じた。(p157)→さっと水谷は全身へざわつきを感じた。

【文庫→四六判】数歩駆けて佐藤の正面に回り込む。そしてその、唇には薄い笑いが浮かんでいるのに、(p157-158)→数歩駆け、佐藤を回り込む。そしてその、唇へ薄く笑いが浮かんでいるのに、

【文庫→四六判】大した理由もないままそんなことを言ってしまった自分を見つけた。(p158)→大した理由もないままそんなことを言ってしまった自分を発見した

【文庫→四六判】「そんな感じがしたかあ。いや、辞めないよ。(p158)→「そうか。そんな感じがしたかあ。―いや、辞めないよ。

【文庫→四六判】「そう。積極的に望んで得た仕事じゃないから、胸を張れたものじゃないにしても」(p158)→「そう。……積極的に望んで得た仕事じゃないから、胸張れたものじゃないにしても」

【文庫→四六判】「真剣にできるなら始まりはどうだっていいって?こないだそんなこと言ってたよね」「そうそう。人の縁もそうバカにしたもんじゃない」(p158)→「真剣に出来るなら、始まりはどうだっていいって?こないだ、そんなこと言ってたよね」「そうそう。人の縁も馬鹿にしたもんじゃない」

【文庫→四六判】運命という言葉で何もかも綴じ込み、リボンをかけて陳列されたストーリーがけれど水谷は大嫌いだった。(p158)→だが、運命という言葉で何もかも綴じ込み、リボンを掛けてショウウィンドウへ陳列されたストーリーなど水谷は大嫌いだった。

【文庫→四六判】そうした物語への嫌悪なんて思いもよらないのは(p158)→そうした物語への反論なんて思いもよらないのは

【文庫→四六判】「たとえどんなにひどい人間だろうと、それだけでその出会いに得るものがないと決めつけることはない」(p159)→たとえ、とやけに神妙な顔で佐藤は言った。「どんなに酷い人間だろうと、それだけで出会いに得るものがないと決めつけることはない」

【文庫のみ】やけに神妙な顔で佐藤は呟いた。独り言のようでもあった。(p159)


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ご覧いただきありがとうございました。

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