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2020年8月28日金曜日

『遠海事件』「第六章」#10 殺しの自白

【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社文庫)「第六章」検証第10回



今回は「第六章」10回目です。
取調室を出ての阿比留と沢木との会話の場面です。
なぜ警視庁は協力を要請したのか、などです。
十年前から殺していたとなっていますが、初めての殺人は高校生の時です。


以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。


【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。

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「第六章」#10



【文庫→四六判】虚ろな瞳の捜査員に、阿比留はさっきまで佐藤に向けていた鋭さで言った。(p193)→虚ろな瞳の捜査員へ、阿比留はさっきまで佐藤へ向けていた鋭さで言った。

【文庫→四六判】二年半前の事件を知るだけなら資料請求でもすればいい。―容疑者の要望で管外の人間を呼ぶほど警視庁は人道的な組織でもねえだろう」(p193)→二年半前の事件と照らすだけなら、資料請求でもすればいい。―容疑者の要望で管外の人間を律儀に呼ぶ程、警視庁は人道的な組織じゃねえだろう」

【文庫→四六判】「当たる事件が多すぎるので効率を重視したんです。名刑事というものに興味もありましたしね。あいつ、阿比留さん以外の刑事を知らないと言ったんですよ」(p193)→「当たる事件が多すぎるもので、効率を重視したんです。―それに、名刑事というものに興味もありましたしね。、阿比留さん以外の刑事を知らないと言ったんですよ」

※証拠を残さなかった佐藤に、唯一最も近付いた刑事だったから沢木が個人的に名刑事と言っているのか、それとも過去に名刑事と言われるような事件を担当したことを知り、名刑事と言ったのでしょうか。

※高校生時代に間近で見た刑事は、対象外なのでしょうか。この時に見た刑事も阿比留だったという可能性もありますが。

【文庫→四六判】「六十人以上の殺しを吐いたって聞いたぞ」(p193)→「六十人以上の殺しを吐いたって聞いたぜ

【文庫→四六判】「そこなんですよ問題は」沢木は煙草を点した。(p193)→「そこなんですよ」問題はと付け足し、沢木は煙草を点けた

【文庫→四六判】阿比留は煙草を灰皿代わりに置かれた空き缶の縁に押し付けた。(p193)→フィルタを焦がし始めた煙草を、阿比留は灰皿代わりに置かれた空き缶の縁に押し付けた。

【文庫→四六判】「やつから殺しの自白が出てきた時、私らはまず狂言の可能性を考えたんです。その時はまだ十人ぶんくらいでしたか。(p914)→「奴の取り調べを始めて、次から次へと殺しの自白が出てきた時、私らはまず狂言の可能性を考えたんです。その時はまだ十人分くらいでしたか。

【文庫→四六判】淡々と喋る様子が嘘臭かったものですから。犯行は広範囲にわたっていて、時期も遡れば十年前から殺していると言うし。で、方々の所轄に連絡を入れて事件の照会をしてみたんですが」(p194)→淡々と喋る奴の様が嘘臭かったものですからね犯行は広範囲にわたっていて、時期も遡れば十年前から殺していると言うし、方々の所轄に連絡を入れて事件の照会をしてみたんですが」

※十年前から殺しているとなっていますが、初めての殺人は高校のときと『亡霊ふたり』に書かれています。
自首当時の2008年で佐藤誠は29歳、十年前は19歳なので高校を留年しているか中学浪人したか、最初の殺人はカウントしていないのか、作者のミスか、あたりになりますね。


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ご覧いただきありがとうございました。

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