【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社文庫)「第五章」検証第10回
今回は「第五章」10回目です。
引き続き阿比留が佐藤の犯行が可能かどうか考えている場面です。共犯者がいるのか、そもそもなぜ首を切断したのか、を考えています。
以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。
【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
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「第五章」#10
【四六判のみ】午後五時二十五分と五十五分、二つの犯行時間を素直に受け止めるなら、(文庫p149の1行目“午後五時台、”の前に入る)
【文庫→四六判】犯人は遠海駅の周囲にいて、三十分ほどの間を空けて二人を殺したことになる。(p149)→犯人は遠海市街にいて、約三十分強の間に二人を殺したのだろう。
【文庫→四六判】だが佐藤誠は、五時半から六時すぎまで遠海駅から離れたビデオ店にいたという。(p149)→だが五時半から六時過ぎまで、佐藤は遠海市街地から離れたビデオ店にいた。
【文庫→四六判】人は異なる場所へ同時に存在することはできない。アリバイの根を支える原理だ。だが、そう見せかけることはできる。(p149)→人は異なる場所へ同時に存在することは出来ない。アリバイの根を支える原理だ。―人に不可能な行い。だが、そう見せかけることは人にも出来る。
【文庫→四六判】すぐ思い付くのは偽造免許証を持たせた他人にビデオ店に行ってもらう手だ。(p149)→簡単なのは、偽造免許証を持たせた他人にビデオ店へ行って貰う手だ。
【文庫→四六判】午後五時五十三分の会員カード作成は、アリバイとして絶妙すぎる。(p149)→午後五時五十三分の会員カード作成は、アリバイとして絶妙に過ぎる。
【文庫→四六判】だがなぜそんな回りくどいことをしたのか。(p149)→だがもしそうした共犯がいるのなら、何故そんな回りくどいことをしたのか。
【文庫→四六判】共犯がいたなら、犯行時刻に一緒にいたと証言してもらったほうがずっと簡単だ。(p149)→犯行を行った後で、その時間帯、一緒にいたと証言する方がずっと判りやすい。
【文庫→四六判】店員に共犯者の写真を見せただけで崩れるかもしれないアリバイより確実でもある。(p149)→店員に共犯者の写真一枚見せただけで崩れ去るアリバイなんかより、そっちの方が確実だ。
【文庫→四六判】阿比留はちかちか瞬くものを脳裏に見た。(p149)→阿比留はちかちか瞬くものを脳裏に見付けた。
【文庫→四六判】外連味に溢れた問いは、佐藤の犯行と親和性があるようにも思えてくる。(p149)→外連味に溢れたそんな問いが、佐藤の犯行不可能性と親和性があるようにも思えてくる。
【文庫→四六判】せいこう(p150)→せいこく ※「正鵠」の読みがな
ご覧いただきありがとうございました。
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