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2020年8月15日土曜日

『遠海事件』「コラム⑤ 佐藤誠 その疑い」#1 捜査本部解散

【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社文庫)「コラム⑤ 佐藤誠 その疑い」検証第1回



詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。

『遠海事件』は、詠坂雄二の代表作というか、主要キャラの佐藤誠が主人公で、他作品へのクロスオーバーが多く、他の作品を読む前に是非呼んでいただきたい一冊になります。


今回は「コラム⑤ 佐藤誠 その疑い」1回目です。
あのときあのまま阿比留が疑いを持ち続けていても真相に至れなかっただろうということ、一年で捜査本部が事実上の解散となったことなどの部分です。


以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。



【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。


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「コラム⑤ 佐藤誠 その疑い」#1


【文庫→四六判】この時阿比留が疑いを持ち続けていたとしても、(p171)→この時に阿比留が疑いを持ち続けていたとしても、

【文庫→四六判】それほど事態には不明な点が多かった。(p171)→それ程に事態には不明な点が多かった。

【文庫→四六判】結局のところ殺害動機すら捜査本部は見つけられなかったのだ。(p171)→結局のところこの時、殺害動機すら警察は見付けられなかったのだ。

【文庫→四六判】佐藤を疑いこそしたものの、動機に関しては推理を組み立てようとさえしなかった。(p171)→佐藤を疑いこそしたものの、動機に関してはその捜索を試みさえしなかった。

【文庫→四六判】不特定多数を狙った理由なき犯行の可能性も視野に入れた大規模捜査を行うが、結果、有力な容疑者が現れたり新たな目撃証言が出ることはなく事件から一年後、捜査本部は縮小―事実上の解散となってしまう。(p171)→不特定多数を狙った理由なき犯行の可能性をも視野に入れた大々的な捜査を行うが、その結果、有力な容疑者が現れたり新たな目撃証言が出るようなことはなく一年後、捜査本部は解散してしまう

【文庫→四六判】事件の話題性を鑑みれば、一年で捜査本部解散というのは早すぎる。(p171)→事件の話題性に鑑みれば、一年で捜査本部解散というのはあまりに早過ぎる

【文庫→四六判】表向きは人材の適正活用が語られているがほかにも理由は考えられる。(p171)→表向きは人材の適正活用とされているが他にも理由は考えられる。

【文庫→四六判】有田亜衣子が自殺(投身自殺未遂より回復したのちの縊死であった)を遂げ、被害者の身内がいなくなってしまい、捜査員の士気が低下したというものだ。(p171-172)→有田亜衣子が自殺(投身自殺未遂より回復して後の縊死であった)を遂げ、特に被害者と近しい身内がいなくなってしまったことで、捜査員の士気が低下したというもの

【文庫→四六判】時に組織としての矜持を必要以上に重視する彼らは決して認めないが、(p172)→時に組織としての矜持を必要以上に重視する彼ら決して認めたりしないが

【文庫→四六判】だが遠海事件の捜査が県警本部長指揮の下に行われたことを考えると、(p172)→だが、本事件の捜査が県警本部長指揮の下に行われたことを考えると、

【文庫→四六判】やはり、何らかの理由からこれ以上の捜査は得策ではないという判断があったと信じたくなる。(p172)→これ以上事件を搔き回すのは得策ではないと上層部が判断したという説の方がいくらか信じられる

【文庫→四六判】もちろん事件そのものの不可解さも理由ではあるだろう。(p172)→しかし、そうした始末を許したという点に眼を向ければ、捜査本部の早期解散を促した最大の原因が事件の不可解さにあったことは間違いない

【文庫→四六判】ここまで不可解でなければ、事件隠蔽の力学が潜むこともできなかったはずだ。(p172)→佐藤誠が関わった事件に共通してある隠蔽性は、遠海事件という特異な事例においても例外ではなかったというわけだ


#2へ続きます。
ご覧いただきありがとうございました。

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