【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社文庫)「第五章」検証第18回
今回は「第五章」18回目です。
引き続き、阿比留が遠海署へ戻った後、吾妻と電話で話をしている場面です。
有田智世に虐待の痕があったこと、公安部が鑑識課へ来たこと、死亡推定時刻を遅らせることは出来ないかなどを話している場面です。何故首切りをしたのかという、まあまあ重要なところになりますね。
以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。
【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「第五章」#18
【文庫→四六判】虐待の事実を示す証拠は公になったほうがいいはずだ。(p164)→虐待の事実を示す証拠はあった方がいいはずだ。
【文庫→四六判】「もう一つ気になることがある。今日の昼、鑑識課の方に公安部の連中が来て、遺留品リストを御丁寧に一時間も眺めていったんだ」(p164-165)→「それと、もう一つ気になることがある。今日の昼、鑑識課の方に公安部の連中が来やがってな。遺留品リストを御丁寧に一時間も眺めていったんだ」
【文庫→四六判】「現場でノートかメモ帳の類を見かけなかったか訊かれたよ。探るような口振りだったぜ。俺が気を利かせた可能性を考えたのかもしれない」(p165)→「―現場でノートかメモ帳の類を見掛けなかったかって訊いてきた。探るような口振りだったぜ。俺が気を利かせた可能性を考えたのかも知れない」
【文庫→四六判】つまり欲しかったのは何らかの情報を記したもの。(p165)→つまり欲しかったのは、何らかの情報。
【文庫→四六判】公安が動いているからには、もしかしたら警察庁にまで関わる何か。(p165)→公安が動いているからには、あまり外へ出したくはない何か。もしかしたら、察庁にまで関わる何か―
【四六判のみ】殺人事件を迷宮入りにしてまで護るべきもの―例えば警察の不祥事が裏にあり、それを隠蔽する為に本部長が指揮を執り、公安を動かしている。そうした物語は好みではなかった。(文庫p165の13と14行目に入る)
【文庫→四六判】「そいつは悪かったな」(p165)→「そいつはわざわざ悪かったな」
【文庫→四六判】そこで阿比留は昼間の問いを思い出した。「吾妻、例えばだが、何らかの工作で死亡推定時刻を遅らせることはできないか」(p166)→そこで、阿比留は昼間の問いを思い出した。「―吾妻、例えばだが、何らかの工作を施して死亡推定時刻を遅らせることは出来ないか」
【文庫→四六判】死んで数時間の屍体現象を遅らせるのは無理だ。(p166)→死んで一日二日の屍体現象を遅らせるのは無理だ。
【文庫→四六判】―これは屍体の腐敗はもちろん、胃の内容物の消化速度にも関わってくるが、その程度だ。(p166)→―これは屍体の腐敗は勿論、胃の内容物の消化速度にも関わるが、その程度だ。
【文庫のみ】死亡推定時刻はひとつのデータで出すわけじゃない。(p166)
【文庫→四六判】体温低下現象なんかは屍体を冷やした場合、むしろ早めてしまう」(p166)→体温低下などは屍体を冷やした場合、むしろ早めてしまう」
コメントなどありましたらお気軽にお願いします。
ご覧いただきありがとうございました。
0 件のコメント:
コメントを投稿