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2020年8月16日日曜日

『遠海事件』「コラム⑤ 佐藤誠 その疑い」#2 自らの無理解

【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社文庫)「コラム⑤ 佐藤誠 その疑い」検証第2回



今回は「コラム⑤ 佐藤誠 その疑い」2回目です。
コラムの後半部分になります。
水谷自身のことについても書かれています。

また佐藤誠の自首に至るまでの月島凪の行動についても少し考えました。


以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。



【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。

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「コラム⑤ 佐藤誠 その疑い」#2



【文庫→四六判】屍体が異様な状態であるにもかかわらずこうした結末へと至ってしまう。(p172)→屍体が異様な状態であるにもかかわらず、こうした結末へ繋がってしまう。

【文庫→四六判】それほど彼の工作は徹底したものだったという結論を導くこともできる(それは端的に真実でもある)、(p172)→それ程に彼の工作は徹底したものだったという結論を導くことも出来るが(それは端的に真実でもある)、

【文庫→四六判】すでに事件の謎も提起されている以上、ここで筆者から付け加えるべきことはないが、謎を謎として捉えてしまった時点ですでに先入観が生んだ無理解に毒されているかもしれないとだけ、重ねて警告しておきたい。(p172)→既に事件の謎も提起されている以上、ここで筆者から付け加えるべきことはない。強いて言うなら、謎を謎として捉えてしまった時点で、既に拭いがたい先入観が生んだ無理解に毒されてしまっていると警告するぐらいた

【文庫→四六判】善悪や物語などを抜きに語りづらい犯罪において、(p173)→善悪や物語などを抜きには語れない犯罪において、

【文庫→四六判】ゆきすぎた理想主義とのの誹りを受けながら犯罪学者が研究対象を善悪から切り離して捉えるのも、そうした偏見を回避しようとするがゆえである。(p173)→ゆきすぎた理想主義とのの誹りを受けながら学者が犯罪を善悪から切り離して捉えるのも、全てはそのような偏見を回避しようとするがである。

【文庫→四六判】筆者は犯罪学を志しまだ数年だが、その短い年月のあいだでも、(p173)→筆者は犯罪学を志してまだ数年だが、その短い年月の間にあっても

【文庫→四六判】遺族の善なる感情が真実を駆逐する絵は幾度か目の当たりにし、そのたび初心を忘れないよう自らを戒めてきた。(p173)→遺族の善なる感情が真実を駆逐する絵は幾度も目の当たりにし、その度、初心を忘れないよう努めてきた

【四六判のみ】平成二十一年度より始まった裁判員制度が裁判の欧米化、劇場化を加速させたと指摘されて久しく、正義が金で買えるようになったと嘆く意見もかまびすしい昨今である。しかしながら、制度がそれに携わる人間を変質させてしまうという意見は、事実であるにせよ、敗北主義的な物言いである。制度にせよ法にせよ、人が思想を読み取り解釈を加え時代に補われ、初めて実用に堪えるものだ。一切の不備がなくそれのみで完結した制度などは自然科学の領域に属すべきものであり、人文学科の出番ではない。(文庫p173の8と9行目に入る)

【文庫→四六判】ならばこそ、である。(p173)→ならばこそ、

【文庫→四六判】真実と寄り添いたければまず、(p173)→真実と寄り添いたいなら

【文庫→四六判】それを理解する者が現れなかったため、事件はこれより二年ものあいだ進展もなく捨て置かれてしまったのだから。(p173)→それを理解する者が現れなかったが為、事件はこれより二年以上もの間何の進展もなく捨て置かれてしまったのだから。
※それで現れた理解者は月島凪ですね。
二年以上から二年ものと訂正されているのは、2008年夏ごろに月島凪が佐藤誠に気づいたということでしょうか。
月島凪は夏ごろから水面下で動き出し、この年の12月に佐藤誠と最初で最後の対面をし、自首につなげたと。


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ご覧いただきありがとうございました。

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