【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社文庫)「コラム④ 佐藤誠 その思想と手法」検証第2回
今回は「コラム④ 佐藤誠 その思想と手法」後半部分になります。
おもに佐藤誠の殺人作法を三つの段階に分解して説明しています。
以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。
【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
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「コラム④ 佐藤誠 その思想と手法」#2
【文庫→四六判】被害者が死亡して反論が得られない殺人という犯罪においては、(p131)→全ての被害者が必然的に死亡している殺人という犯罪においては、
【文庫→四六判】記録に残る佐藤誠の言葉の端々にもそうした思想は滲んでいる。(p131)→記録に残る佐藤誠の言葉の端々には、そうした思想が滲んでいる。
【四六判のみ】これは一般的な開き直りとは意味を異にする、無責任性とも言うべき独自の思想だ。(文庫p131の10行目“滲んでいる。”と“罪に囚われることを、”の間に入る)
【文庫→四六判】罪に囚われることを、佐藤は殺人者の道に悖ると考えていた節すらあるのだ。(p131)→彼は、罪に囚われることは、殺人者の道に悖ると考えていた節すらある。
【文庫→四六判】それらを踏まえてその殺人作法を眺めると、三つの段階に分解して説明することができる。(p131)→それらを踏まえた上で立ち止まり、佐藤誠の殺人作法を眺めてみると、主に三つの思想へそれぞれ対応する段階から成っていることが判る。
【四六判のみ】当たり前と思われるかも知れないが、その時々で機能する思想は違う。だが、違いながらもそれらは、犯罪の発覚を防ぐという点では一致している。(文庫p131の3と14行目の間に入る)
【文庫→四六判】殺人以前では、殺人を手段としてしか捉えない思想が冷静さを保たせ、計画の万全を助け、また動機の不透明を高めた。(p131)→殺人以前では、殺人を手段の一つとして捉える思想が彼の冷静を保ち計画の万全を助け、動機の不透明を高めた。
【文庫→四六判】殺人の最中では、彼自身の経験と技術が作業の迅速化を助け、徹底した屍体隠蔽を実現させた。(p131)→殺人の最中では、彼自身の経験と技術が作業の迅速を実現し、徹底した屍体隠蔽を実現させた。
【文庫→四六判】殺人以後では、罪を眺めず手にも取らない実存主義が罪悪感を消し、滑らかな嘘を吐くことも自然にさせた。(p131-132)→殺人以後では、罪を眺めず手にも取らない実存主義が罪悪感を消し、滑らかな嘘を世へ吐くことを良しとした。
【文庫→四六判】またそれらすべてを佐藤誠自身の立場に由来する不安定性が包み、有象無象の森へ覆い隠した―といった次第である。(p132)→またそれら全てを、彼自身の自由な立場に由る浮遊性が包み、有象無象の森へと覆い隠した、と。ざっとこういった次第である。
【文庫→四六判】ゆえに組織に溶けたまま動く者の相手は苦手とする。(p132)→故に、組織へ溶けたまま動く者の相手は苦手としている。
【文庫→四六判】佐藤誠とはそうした犯罪者だった。(p132)→佐藤誠とはそうした殺人犯だった。
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