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2020年7月24日金曜日

『遠海事件』「コラム④ 佐藤誠 その思想と手法」#1

【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社文庫)「コラム④ 佐藤誠 その思想と手法」検証第1回



詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。

『遠海事件』は、詠坂雄二の代表作というか、主要キャラの佐藤誠が主人公で、他作品へのクロスオーバーが多く、他の作品を読む前に是非呼んでいただきたい一冊になります。

今回と次回は「コラム④ 佐藤誠 その思想と手法」の検証になります。削除されている部分が多い印象です。今回はコラム④の前半部分になります。

以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。




【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。

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「コラム④ 佐藤誠 その思想と手法」#1


【文庫→四六判】殺人に伴う諸々の始末が徹底されていた点にあることは何度も述べた。(p130)→殺人に伴う諸々の始末が完璧だった点にあることは何度も述べた。

【文庫→四六判】佐藤誠の演技力―事件が露見しても、それとの無関係を信じさせる振る舞いがそうだ。(p130)→佐藤誠の演技力―事件が露見しても、それとの無関係性を自然に匂わせる振る舞いがそうだ。

【文庫→四六判】とぼけぶりの見事さと言うべきかもしれない。(p130)→より判りやすく、とぼけぶりの見事さと言うべきかも知れない

【文庫→四六判】通常、殺人犯は犯行後に冷静を失い、そのためにのちの行動で犯行が知れたり、(p130)→通常の殺人犯は犯行後に冷静を失い、その為に後の行動で犯行が知れたり、

【文庫→四六判】計画的犯罪のうちにも見られる傾向だ。(p130)→計画的犯罪の内にすら見られる傾向だ。

【四六判のみ】そうした変化がない者もいるが、その大半は例えば精神遅滞であったり、犯行時の記憶をなくしていたり―有り体に言えば、責任能力を喪失している。そうした相手は罪にこそ問えないものの、犯行の露見はむしろ時間の問題であることが多い。(文庫p130の10行目“外から判る変化を伴うのが普通である。”の直後に入る)

【文庫→四六判】しかし佐藤誠は犯罪と同様、(p130)→しかし佐藤誠はその犯罪と同様

【文庫→四六判】罪を認め、刑の執行を受けた現在でさえ当時の彼を知るひとびとの中にその罪を疑っている者が珍しくないのには、(p130-131)→彼が罪を認め、刑の執行を受けた今でさえ当時の佐藤誠を知る人々の中にその罪を疑っている者が珍しくないのには、

【文庫→四六判】彼の演技力を支えていたのが殺人を簡単に選ぶ思想であることは論を俟たないところだが、(p131)→彼の演技力を支えていたのが殺人を当然に思う埒外な思想であることは論を俟たないが、

【文庫→四六判】死とは時と並んで、生物の身近にあり続ける不可逆な機構だ。(p131)→死とは時と並び、生物の身近にある不可逆な機構だ。

【文庫→四六判】決して還らないがゆえに殺人者に償う方法はなく、であれば罪を直視することに意味もなく、それゆえに罪を相手にしない。(p131)→そうであるが故に殺人者に償う道はなく、罪を直視することに意味もない。故に罪を相手にしない。


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