【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』「第二章」検証第1回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『遠海事件』は、詠坂雄二の代表作というか、主要キャラの佐藤誠が主人公で、他作品へのクロスオーバーが多く、他の作品を読む前に是非呼んでいただきたい一冊になります。
今回から「第二章」、遠海事件発生当日の話です。
今回は最初の段落で、佐藤誠が蛎塚専務のマンションに到着したところまでを見ていきます。
細かい修正が多いですが、佐藤誠を深く知るためには重要な修正箇所もあります。
以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。
・【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
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「第二章」#1
【文庫→四六判】怪しげな色を見せていた曇天が破裂したような雨を降らせたのは、(p42)→それまで怪しげな色を見せていた空が破裂したように落ちてきたのは、
【文庫→四六判】構内で売っていたビニール傘を買って差し、(p42)→構内で売り出したビニール傘を買って差し、
【文庫→四六判】雨の勢いはいくらか弱まっていたが、それでも街のざわめきをかき消すほどに降り続けている。(p42)→勢いはいくらか弱まっていたが、それでも雨は街の音を掻き消す程に降り続けている。
【文庫→四六判】雨具のない人々が走り回る街中を歩き、(p42)→雨具のない人々が走り回る街中を数分歩き、
※別箇所で駅チカと書いているので削除されたのだと感じます。
【文庫→四六判】表の看板にはパレス遠海と表示がある。玄関ホールには誰もおらず、そこから先へ進むドアはロックされていたが、彼は以前にそこを開ける暗証番号を聞いていた。(p42)→パレス遠海と表示のある玄関を抜けた先のホールには誰もおらず、内部へ進むドアはロックされていた。だが彼は以前にそこを開ける暗証番号を聞いていた。
【文庫→四六判】半年も前のことだが、(p43)→半年も前の話だったが、
【文庫→四六判】駄目もとで入力すると、ロックはあっさり解除された。(p43)→駄目元で入力してみると、ロックはあっさり解除された。
※暗証番号が変更されていたらここで話は終わりですね。物語になりませんね。恐らくブックセルの倒産は早まったのではないでしょうか。
【文庫→四六判】天井にある防犯カメラを眺めながらエレベータのボタンを押す。(p43)→向こうの天井際にある防犯カメラを眺めつつエレベータのボタンを押す。
【文庫→四六判】目指す先は会社の重役で、彼にとっては恩師でもある蛎塚諒一の住居だった。(p43)→目指す先は会社の重役であり、彼にとっては恩人でもある蛎塚諒一の住居だった。
※恩人、となっていたのでおそらくネットカフェなどに一時期寝泊まりしていた可能性が高くなると思われます。
【文庫→四六判】彼は改めて自分の姿を眺めた。(p43)→彼は改めて自分の姿を見る。
【文庫→四六判】手ぶらだが、ズボンの裾に隠したナイフは研いであり、刀に匹敵する切れ味を保っている。(p43)→手ぶらだが、ズボンの裾に隠したナイフは前夜の内に研いであり、刀に匹敵する刃を保っている。
※6月27日夜ですね。見落としていたので、詠坂雄二作品時系列一覧にも追加しました。併せてご覧ください。
【文庫→四六判】ある意味でそれこそが恩師への手土産になるものだった。(p43)→ある意味で、それこそが恩人への手土産になるものだった。
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ご覧いただきありがとうございました。
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