【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社文庫)「第二章」検証第13回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『遠海事件』は、詠坂雄二の代表作というか、主要キャラの佐藤誠が主人公で、他作品へのクロスオーバーが多く、他の作品を読む前に是非呼んでいただきたい一冊になります。
今回は「第二章」13回目、阿比留と松代がなぜ首を通路へ出したのかを考えている場面です。
以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。
・【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
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「第二章」#13
【文庫→四六判】犯人は有田智世をキッチンで殺し、流しで首を切断して外へ運んだと思われた。だが―(p61)→犯人は有田智世を殺してここで首を切断し、首だけを外へ運んだ。そう考えて矛盾はない。だが―
【文庫→四六判】現場を同じように見ていた松代が何がですと尋ねてきた。(p61)→通報で来た警官からの話を聞き終えた松代が何がですかと尋ねてきた。
【文庫→四六判】「自己顕示欲の現れとか」(p61)→「自己顕示欲―とか」
【文庫→四六判】「もっと明るいところまで運ぶ度胸はなかったか?深夜に母親が戻るのはいつものことで、見つけたのは結局その母親だ。(p62)→「もっと明るいところまで運ぶ度胸はなくて、か? だが、深夜に母親が戻るのはいつものことなんだろ。それで結局見付けたのはその母親だ。
【四六判のみ】だとすれば、真剣に発見を早めようとしたわけじゃねえことになる。……何かしっくりこねえな。(文庫p62の4行目“……母親が屍体を見つけた時、”の前に入る)
【文庫→四六判】この部屋の錠はどうなってた?」(p62)→このドアの錠はどうなってた?」
【文庫→四六判】母親は部屋の中で錯乱していたので、まだ判らないそうです。話が聞ける状態になってからですね」(p62)→母親は部屋の中で錯乱していたので、頭部の発見時には施錠されていたかも知れません。そこらは話が聞ける状態になってからですね」
【文庫→四六判】阿比留はもう一度キッチンを見た。(p62)→阿比留はキッチンを見回した。
【文庫→四六判】隣人の証言を信じて推理を組み立てれば、(p62)→隣人の証言を素直に聞けば、
【文庫→四六判】しばらくしてから戻ってきたことになる。恐らく首を通路へ出すためにだ。(p62)→後で戻ってきたことになる。首を通路へ出す為にだ。
【文庫→四六判】部屋の中に置きっぱなしでは屍体がなかなか発見されないと思っていたのだ。つまり(p62)→部屋の中に置きっぱなしでは屍体がなかなか見付からないと思っていたのだ。ということは―
【文庫→四六判】「母親が深夜に帰ってくることを知らなかったんだ」(p62)→「母親が深夜に帰ってくることを知らなかったのかもな」
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ご覧いただきありがとうございました。
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