【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社文庫)「第二章」検証第9回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『遠海事件』は、詠坂雄二の代表作というか、主要キャラの佐藤誠が主人公で、他作品へのクロスオーバーが多く、他の作品を読む前に是非呼んでいただきたい一冊になります。
今回は「第二章」9回目、阿比留と松代がベルウッド紫浦に到着し、幼女の頭部を見た場面までになります。
以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。
・【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
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「第二章」#9
【文庫→四六判】雨が上がり、てらてらと光るアスファルトを踏みつけて(p55)→雨がようやく上がり、てらてらと濡れ光る繁華街のアスファルトを踏みつけ、【文庫→四六判】そのモルタル二階建てのアパートは野次馬たちに覆われていた。(p55)→そのモルタル二階建てのアパートは傘を差した野次馬達に覆われていた。
※直前で雨が上がったと書かれいているので、でしょうか。
【文庫→四六判】阿比留は外に出て大きく伸びをしてみせた。(p55)→阿比留は外に出て大きく伸びをした。
【文庫→四六判】無視して制服警官に手を挙げ、張られたロープを跨ぎ、外付けの階段を上がっていく。(p55)→構うかよと返し、制服警官に手を挙げ、張られた虎ロープを跨ぎ、外付けの階段を軋ませながら上がっていく。
※上記二つは、野次馬たちを威圧するため、敢えて大きく伸びをしたと変更したのでしょうか。
【文庫→四六判】高級マンションを謳っていただろうパレス遠海と異なり築二十年は経過している建物で、ベルウッド紫浦という表示が表にあった。(p55-56)→高級マンションと名付けて売り出していただろうパレス遠海と違い、築二十年は経過している建物だった。ベルウッド紫浦という表示が外壁にある。
【文庫→四六判】アパートの中央を貫いて延びる二階通路の中途、蛍光灯が切れかけていて薄暗い一帯がブルーシートのカーテンで区切られていた。(p56)→アパートの中央を貫くように延びる二階通路の中途、蛍光灯も半分が切れて薄暗い一帯が、ブルーシートのカーテンで区切られていた。
【文庫→四六判】投光器に照らされた中を鑑識が動き回っている。(p56)→投光器に照らされた中で鑑識が忙しく動き回っている。
【文庫→四六判】廃油で汚れた毛だらけのボールのようなものがそこにあった。(p56)→それは、廃油に汚れた毛だらけのハンドボールのように見えた。
【文庫→四六判】ゆっくり回り込んでいくと、髪の毛のあいだから小さな顔が窺えた。(p56)→ぐるりと回り込むと、髪の毛の間から顔が窺えた。
【文庫→四六判】小学生、それも低学年だろう。虚ろな瞳はどこも見ていない。(p56)→まだ幼い顔立ちに、虚ろな両瞳が天を眺めていた。
【文庫→四六判】周囲に血痕も少なかった。切断場所はここではないらしい。(p56)→周囲に血痕も少ない。切断場所はここではないのだろう。
【文庫→四六判】松代が歯軋りをした。阿比留は立ち上がり、近くにいた制服警官に尋ねた。(p56)→脇で松代が歯軋りする。阿比留は立ち上がり、シートの外にいた制服警官へ尋ねた。
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