【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社文庫)「第三章」検証第10回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『遠海事件』は、詠坂雄二の代表作というか、主要キャラの佐藤誠が主人公で、他作品へのクロスオーバーが多く、他の作品を読む前に是非呼んでいただきたい一冊になります。
今回は「第三章」10回目、第3チャプターのはじめ、水谷が佐藤誠に電話で話をしている場面です。時野のパラレルワールドも考えてみました。
以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。
【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
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「第三章」#10
【文庫→四六判】何か大変なことに遭ったって―(p93)→何か、大変なことに巻き込まれたって―
【文庫→四六判】そのものを指すのはためらわれて濁したが、佐藤はあっさり、首切りかと言う。(p93)→そのものを指すのはためらわれて濁したのだが、佐藤はあっさり首切りのことかと言う。
【文庫→四六判】「確かに時野が好きそうな飾りだ。でもそんなことを君に喋るなんてどうかしてる。いつかそんな自分の性格に復讐されなければいいけど」(p93)→「そっか、そうだな。時野が好きそうな飾りだ。でもそんなことを君に喋るだなんて、どうかしてる。いつかそんな自分の性格に復讐されなければいいけど」
※この約半年後が『リロ・グラ・シスタ』の舞台ですが、もしこの事件がなかったとしたら、時野が佐藤誠に殺されていた未来もあったのでしょうか。遠海事件の真相が判ったということで。この場合でも早とちりのような気もしますが。
【文庫→四六判】親の言葉には愛情が濃すぎるし、教師は立場でものを語る。(p93)→親の言葉には愛情が邪魔して真実が薄いし、教師は立場でものを語る。
【文庫→四六判】佐藤が口にする言葉は無関心が看過させたものが多く、(p93)→佐藤が口にする言葉は無関心が看過させたものであり、
【文庫→四六判】損得勘定抜きに耳を傾けることができたのだ。(p93)→損得勘定抜きで耳を傾けることが出来たのだ。
【文庫→四六判】「じゃなく、前に聞きそびれたことがあって―」(p94)→「じゃなくて。前に聞きそびれたことがあって―」
【文庫→四六判】通話を切りたくなくて出た言葉に縋り、彼女は続けた。(p94)→通話を切りたくなくて思わず口を吐いて出た言葉へ縋り、続ける。
【文庫→四六判】なれって命令されても断ってたろうなあ。(p94)→なれって命令されてもやっぱり断ってたろうなあ。
【文庫→四六判】試しにやってみたら続いたのさ」(p94)→試しにやってみたら続いたってだけのことさ」
【文庫→四六判】電波が悪くなったのかと水谷は空を眺めてみたが、月さえ自販機の明かりを相手に分が悪い夜空に変わったところはない。(p95)→電波が悪くなったかと水谷は薄暗くなり始めた空を仰いでみたが、月さえ自販機の明かりを相手に分が悪い夜空に変わりはない。
【文庫→四六判】「好きじゃなくても、納得できなくても、真剣になれるんだよ」(p95)→「好きじゃなくても、納得出来なくても、真剣になれるんだよ。理由もなくね」
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ご覧いただきありがとうございました。
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