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2020年6月3日水曜日

『遠海事件』「第二章」#3 殺害現場

【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社文庫)「第二章」検証第3回



詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。

『遠海事件』は、詠坂雄二の代表作というか、主要キャラの佐藤誠が主人公で、他作品へのクロスオーバーが多く、他の作品を読む前に是非呼んでいただきたい一冊になります。

「第二章」第3回目、阿比留が現場に入った後から首なし屍体を見るまでの場面になります。
重要な部分だからかわかりませんが修正箇所も多くなっています。


※下記太字の部分がネタバレになります。作品読了後にご確認ください。



・【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。

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「第二章」#3


【文庫→四六判】フローリングには絨毯が敷かれており、ソファがあった。その上には生活臭豊かな洗濯物が畳まれている。(p45)→フローリングへ絨毯とソファが置かれ、その上には生活臭も豊かに畳まれた洗濯物がある

【文庫→四六判】ソファの向かいにはオーディオのセットが置かれ、液晶テレビは部屋の隅に追いやられていた。(p45)→向かいにはオーディオのセットがでんと置かれ、液晶テレビは脇へ追いやられていた。

【四六判のみ】それら全てを汚し、血液は天井にまで至っている。(文庫p45の4行目“部屋の隅に追いやられていた。”の後に続く)
※文庫だけ読むよりも現場も凄さが伝わってきますが、首を吊ったあとの蛎塚をソファに座らせて首を切断したなら、天井まで血は飛ぶのか、という疑問があります。蛎塚の死後どのくらい時間が経っているのか書かれていませんが、心臓が止まっているので血液は躰の下に溜まるのでは?ということで削除されたのではないでしょうか。

【文庫→四六判】撮影の都合かソファに座る屍体はシートで隠されていない。(p45)→写真撮影の都合かソファへ座る屍体はシートで隠されておらず、おかげで異常はすぐに判った

【文庫→四六判】躰付きは中肉中背、(p45)→中肉中背の屍体は

【文庫→四六判】年齢を測るのに最もあてになる顔が屍体になかったのだ。(p45)→年齢を測るのに最も有効な顔が屍体になかったのだ。

【四六判のみ】いや、なかったのは顔だけではない。(文庫p45の7行目“顔が屍体になかったのだ。”の後に続く)

【文庫→四六判】頭部そのものが欠けていたのである。(p45)→屍体には頭部そのものが欠けていた

【文庫→四六判】頸部ですっぱり截られた断面が肉と脂肪と骨を覗かせている。(p45)→頸部ですっぱりと截られ、断面が肉と脂肪と骨を覗かせている。

【文庫→四六判】周囲ではカメラのシャッター音が響き、(p45)→周囲では鑑識の落とすシャッター音が淡々と響き



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