【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社文庫)「第三章」検証第11回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『遠海事件』は、詠坂雄二の代表作というか、主要キャラの佐藤誠が主人公で、他作品へのクロスオーバーが多く、他の作品を読む前に是非呼んでいただきたい一冊になります。
今回は「第三章」11回目、佐藤誠と水谷の電話の場面から、通話を切ったあとの佐藤誠が首切りの際にミスがなかったなどを吟味している場面です。詠坂雄二の全作品の時系列表にも追加した項目もあります。下記をご覧ください。
以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。
【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
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「第三章」#11
【文庫→四六判】「まあそもそもそういう人間が長くフリーターをやるものだから、僕が特別ってのは言いすぎか。(p95)→「まあ、そもそもそういう人間が長くフリーターをやるものだからなあ。僕が特別ってのは言い過ぎか。
【文庫→四六判】なら仕方ないねと返された言葉を彼女は聞き流した。(p95)→なら仕方ないねと返された言葉を彼女は聞き流す。
【文庫→四六判】夜へ親しむくらいなら、淋しさへ親しんでたほうがずっといいんだぞ」(p96)→夜へ親しむくらいなら、淋しさに親しんでた方がずっといいんだぞ」
【文庫→四六判】淋しくしている人間を羨ましく思ったことなんて一度としてなかった。(p96)→淋しくしている人間を羨ましく思ったことなど、一度としてないことを彼女は思い出した。
【文庫→四六判】ひとりであてもなくさまよっていた少し前の自分へと辿りつく。(p97)→一人で行き場を持たずにあちこちさまよっていた少し前の自分へと至る。
【文庫→四六判】畳に寝そべったまま佐藤誠は天井を眺め、(p97)→畳に寝そべったまま、佐藤誠は天井の円い蛍光灯を眺め、
【文庫→四六判】念のためと身の回りのものを片付けつつ、自分の為したことを思い出し、ひとつひとつ吟味したのだ。(p97)→念の為と身の回りのものを片付けた後で、事件で自分の為したことを思い出し、一つ一つ、吟味を繰り返していた。
※繰り返していたのなら、その後の“問いに囚われてしま”っているから修正されたのでしょうか。
※この部分は時系列に漏れていたので追加しました。こちら詠坂雄二全作品時系列をご確認ください。2006年6月29日分になります。
【文庫→四六判】切り抜けられるだけの手がかりしか現場には残していないはずだ。(p97)→切り抜けられるだけの手掛かりの薄さしか現場には残していないはずだ。
【文庫→四六判】それでも、ふとすると問いに囚われてしまうのだった。(p97)→だが、ふとすると問いに囚われてしまう。
【文庫→四六判】そうすることの意味はあった。(p97)→そうすることによる効果は確かにある。
【文庫→四六判】方法はほかにもあったはずだ。(p98)→代替案は他にもあったはずだ。
【文庫→四六判】あの時選べる方法の中であれが最善だったとしても―選ぶべきだっただろうか。(p98)→あの時あった道具で為せる選択肢であれが最善だったとしても―選ぶべきことだっただろうか。
コメントなどありましたらお気軽にお願いします。
ご覧いただきありがとうございました。
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