【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社文庫)「第二章」検証第6回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『遠海事件』は、詠坂雄二の代表作というか、主要キャラの佐藤誠が主人公で、他作品へのクロスオーバーが多く、他の作品を読む前に是非呼んでいただきたい一冊になります。
今回は「第二章」、阿比留が発見者の佐藤誠に話を聞いている場面です。
以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。
・【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
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「第二章」#6
【文庫→四六判】相手は瞳に怒りを浮かべていた。(p47)→相手は怒りを浮かべていた。
【文庫→四六判】他殺屍体の発見者は、呆然とするか哀しみに嘆くか動揺するのが普通だ。(p47)→呆然とするか哀しみに嘆くか、ひたすら動揺するのが普通の反応だ。
【文庫→四六判】反応として怒りは稀である。そうしたものは普通、日が経って気持ちが一段落してから湧き上がってくるものだ。(p47-48)→他殺屍体の発見者が浮かべる反応として、怒りは稀である。抱くにしてももっと後、気持ちが一段落してからになるのが通常だ。
【文庫→四六判】「ちょっと仕事の件で、相談事があったもので」(p48)→「ちょっと相談事があったもので―仕事の件で」
【文庫→四六判】どうやってそこから先へ進んだんですか」「前に解除の番号聞いてて。(p48)→どうやってそこから先へ入ったんですか」「前に専務から解除の番号聞いてて。
【文庫→四六判】相手の顔に若者にふさわしい反感が浮かんだ。(p48)→相手の顔へ二十代に相応しい反感が浮かんだ。
【文庫→四六判】そんなもんですかと冷えた声が返り、そんなものなんですよと阿比留は頷いた。(p48-49)→そんなもんですかとぞんざいな答が返る。ええ、そんなものなんですよと阿比留は頷いた。
【文庫→四六判】その瞳から一筋、涙が頬を伝わった。(p49)→するとその瞳から一筋、涙が頬を伝わった。
【文庫→四六判】阿比留は以前、実の娘を絞め殺して屍体を他人の庭へ放り込み、(p49)→阿比留は以前、五歳になる実の子供を絞め殺して屍体を他人の庭へ放り込み、
※年齢が削除されて性別が追加されていますね。今のところ他作品にも、五歳の女児が絞め殺されたという事件は確認されていません。もし何か判り次第検証します。
【文庫→四六判】罪を逃れようとする者の演技力を甘く見る気はなかった。(p49)→罪を逃れようとする人間の演技力を甘く見る気はなかった。
コメントなどありましたらお気軽にお願いします。
ご覧いただきありがとうございました。
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