【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件』『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社文庫)「第二章」検証第2回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『遠海事件』は、詠坂雄二の代表作というか、主要キャラの佐藤誠が主人公で、他作品へのクロスオーバーが多く、他の作品を読む前に是非呼んでいただきたい一冊になります。
今回は「第二章」第1回目、阿比留と松代が蛎塚専務殺害現場に到着したところまでです。
ちなみにこの時期(2006年6月28日)は、『リロ・グラ・シスタ』の半年前になります。
以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。
・【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
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「第二章」#2
【文庫→四六判】パトカーからひとっ走りして飛び込んだマンション入口で水滴を払いつつ、阿比留は夕方から降り出した雨に舌打ちを聞かせた。(p43)→パトカーからひとっ走りして飛び込んだマンションの入口で、衣服の水滴を払いつつ空を睨み、阿比留は夕方から降り続けの雨へ舌打ちを聞かせた。
【文庫→四六判】手がかりに無数の嘘をばらまいてしまう。(p43)→手掛かりへ無数の嘘をばらまいてしまう。
【文庫→四六判】厚みのある躰に猛禽類とも瓦礫とも形容される顔付き、担いだ上着が堅気離れした絵面を作っている。(p43)→厚みのある躰と瓦礫のような顔付きへ、肩に担いだ濃紺の上着が堅気離れした絵面を作っている。
※この猛禽類という描写で、『乾いた屍体は蛆も湧かない』に出てくる刑事が阿比留だと特定できます。
【文庫→四六判】上着が上等なものであればヤクザにしか見えなかったろう。(p43-44)→上着が上等なものであったなら、ヤクザにしか見えなかったろう。
【文庫→四六判】街の中では無個性なビルにすぎない。(p44)→街では何の引っ掛かりもない無個性なビルに過ぎない。
【文庫→四六判】そのくせ、街を単色に染め上げて時代を作るのはいつもこの手の無味乾燥な代物なのだ。(p44)→そのくせ、街を染めて時代を演出するのはいつだってこの手の無味乾燥な代物なのだ。
【文庫→四六判】寝てないんですかと背後から松代の問いが飛んできた。(p44)→寝てないんですかと後ろから松代の声が飛んできた。
【文庫→四六判】こちらはまだ二十代、優い顔付きの刑事だ。(p44)→まだ二十代の、優い顔付きの刑事だ。
【文庫→四六判】でなければ警官の現着から十分で県警刑事の出張りが決定されるわけはない。(p44)→でなければ、警官の現着から僅か十分で県警刑事の出張りが決定されるわけはない。
【文庫→四六判】エレベータで八階へ向かい、入口に陣取る制服警官に手を挙げて八〇二号室に入った。(p44)→エレベータで八〇二号室へ向かい、入口に陣取る制服警官の脇を抜け、部屋に入った。
【文庫→四六判】そこにいた所轄刑事と短い挨拶を交わし、鑑識が作業している現場を一渡り眺める。(p44)→そこにいた所轄刑事へ短い挨拶を投げ、鑑識が作業する現場を一渡り眺める。
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