【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』「第一章」検証第9回(最終回)
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『遠海事件』は、詠坂雄二の代表作というか、主要キャラの佐藤誠が主人公で、他作品へのクロスオーバーが多く、他の作品を読む前に是非呼んでいただきたい一冊になります。
今回は第9回目、「第一章」ラストまでになります。
もしこのときの会話で新村が、それでも「社長」と言っていたら遠海事件は起こらず、社長も専務も不在になりブックセルの倒産は時期が早まったのでしょうか。本来より早くに倒産し、佐藤誠も解雇され、生活の安定を失ったなどの理由で殺人がさらに増えていた可能性もありますね。
ブックセル社長の殺害も日常生活の選択肢のひとつのように殺したひとつに紛れ、佐藤誠の逮捕後に自供で発覚していたでしょう。だとすると小説になりませんね。
閑話休題。
以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。
・【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
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「第一章」#9
【文庫→四六判】入社二年目で伝統ある東遠海店を任されたのには理由があるのだ。(p33)→店舗担当者になれる人材が何人かいる中、入社二年目で伝統ある東遠海店を任されたのには、それなりに理由がある。【文庫→四六判】企画力に秀でているわけでもない。(p33)→売場企画力に秀でているわけでもない。
【文庫→四六判】どうしてそんなことができるのか。新村には判らなかった。(p33)→どうしてそんなことが出来るのかと考えてみても、新村には判らない。
【文庫→四六判】あるいは隙を衝くのが巧いというほうが正しいのかもしれなかった。(p33)→深く踏み込むというのは、だからためらいがないという意味ではなく、隙を衝くのが巧いといった方が正しいのかも知れなかった。
【文庫→四六判】肩を借りてしまっている。(p33)→肩を借りて歩いている。
【文庫→四六判】もっと言えば選んだほうを正しくすればいいだけの話だろ」(p34)→もっと言ってしまえば、選んだ方を正しくすればいいだけの話だろ」
【文庫→四六判】壬国店に行くたび、(p35)→店舗担当になってからも、壬国店に何かの用事で行く度、
【文庫→四六判】佐藤は頷き、その話題についてはそれきりになった。(p36)→佐藤は頷き、そしてその話題についてはそれきりになった。
【文庫→四六判】新村はいくぶん楽な気持ちで帰路に就き、(p36)→新村はいくらか楽な気持ちになって帰路に就き、
【文庫→四六判】まあいいさと呟き、すぐに忘れてしまった。(p36)→まあいいさと呟き、会話を忘れてしまった。
【文庫→四六判】佐藤誠はのちに、この時初めて恩師―蛎塚諒一殺害を考えたのだと供述している。(p36)→佐藤誠は後に、この時初めて恩師―蛎塚諒一の殺害を考えたのだと供述している。
コメントなどありましたらお気軽にお願いします。
ご覧いただきありがとうございました。
次回は「コラム①」です。個人的に貴重な発見もしました。
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