【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』「第一章」検証第4回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『遠海事件』は、詠坂雄二の代表作というか、主要キャラの佐藤誠が主人公で、他作品へのクロスオーバーが多く、他の作品を読む前に是非呼んでいただきたい一冊になります。
「第一章」第4回目、佐藤誠が水谷に万引きを諭しているところから時野と佐藤との会話あたりをみていきます。
以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。
・【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
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「第一章」#4
【文庫→四六判】同じ値段の本を一六冊売らなきゃいけないってことなんだよ!(p19)→同じ値段の本を一六冊売らなきゃいけないんだよ!
【文庫→四六判】一般化した言い方をするなら、一冊盗まれると四冊ぶんの利益が吹き飛ぶわけだ。もっと言えば、(p19)→一般化するなら、一冊盗まれると四冊分の利益が吹き飛ぶわけだ。逆に言えば、
【文庫→四六判】頷き顔を上げると、エプロンに付いた名札が横切った。(p20)→そして上げた視界へ、相手のエプロンに付いた名札が横切った。
【文庫→四六判】高校生アルバイト、時野将自は、そんなわけでレジの中で暇を持てあましていた。(p20)→近くの私立高校に通う高校生(履歴書では十八歳と通してあるが)アルバイト、時野将自は、そんなわけで暇を持て余していた。
※次回少し詳しく検証します。
【文庫→四六判】退屈だあと呟いても(p21)→「退屈っすよー」呟いても、
【文庫→四六判】蛍光灯を眺めながら、(p21)→天井の蛍光灯を眺めながら、
【文庫→四六判】あっちはあっちで面倒があるか―(p21)→あっちはあっちで面倒があるんだろうけど―
【文庫→四六判】奥の棚を指差すと、少女はそちらに駆けていく。(p21)→あっち、と奥の棚を指差すと、少女はそちらにととととと駆けていく。
【四六判のみ】だが印象は悪くなかった。(文庫p21の15行目“取り合わせも地味だ。”の後に続く)
※水谷育の印象。元々は愛想なし一辺倒じゃありませんでした。序文、跋文、コラムの印象をより強めるために削ったのでしょうか。他作品の成長した水谷に触れている文でも、詠坂にとって印象は悪そうなイメージがあります。
【文庫→四六判】突発的な流れがすぎてふと顔を上げると、(p22)→突発的に忙しくなった流れが過ぎてふと顔を上げると、
【文庫のみ】時野は尋ねた。(p22)
コメントなどありましたらお気軽にお願いします。
ご覧いただきありがとうございました。
ちなみに『遠海事件』の半年後が『リロ・グラ・シスタ』の舞台です。
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