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2020年5月25日月曜日

『遠海事件』「第一章」#6 何も引っかからない名前

【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』「第一章」検証第6回



詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。

『遠海事件』は、詠坂雄二の代表作というか、主要キャラの佐藤誠が主人公で、他作品へのクロスオーバーが多く、他の作品を読む前に是非呼んでいただきたい一冊になります。

今回は第6回、佐藤と時野の会話の終わり部分から、白木屋の帰りの佐藤と新村光次の会話の冒頭部分になります。比較的重要な部分もあります。

以下ネタバレもありますので作品読了後にご確認ください。



・【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。

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「第一章」#6


【文庫→四六判】これが愛想のいい美少女とかだったら、誤解を招きそうで迷いなく追い払えるんだけどね。で、話を聞いたらまだ中学二年生だって言うんだ。(p26-27)→これが愛想のいい美少女とかだと、誤解を招きそうで迷いなく追い払えるんだが。―でも、よくよく話を聞いたらまだ中学二年生だって言うんだ。

【文庫→四六判】「器用なほうじゃないな。(p27)→「ま、器用な方じゃないな。

【文庫→四六判】「これでも気にしてるんだ。あんまり言わないでくれ」(p28)→「これでも気にしてるんだ。あんまり話題にしないでくれ

【四六判のみ】静かに言う佐藤に、時野は、何も引っ掛からない名前ですよねという軽口を遠慮した。言葉の本意へ思い当たることもないまま。(文庫p28の3行目の後に続く)
※のちの伏線にもなる部分ですね。無い方がすっきり読めますね。直前の会話が一読して伏線とはわかりづらくなったとも思います。

【文庫→四六判】彼が店長を務めていたブックセル壬国店はその日をもって閉店作業を完了させ、彼は晴れて無役となったのである。(p27)→彼が店長を務めていたブックセル壬国店はその日、六月二十日をもって閉店作業を完了し、彼は晴れて無役の身となってしまったのである
※日付部分は削除されているので時系列を知ることに関しては貴重な部分ですね。
「遠海事件」が起こる約一週間前ですね。この「遠海事件」の時期の2006年6月は、「T島事件」の9ヶ月後、山村朝里に自首するよう諭した7ヶ月後になります。月島凪は何をしていたんでしょうか。

【四六判のみ】懲罰人事などと言える程に大きな会社でもないが、似たようなものだ。(文庫p28の9行目“バイトの穴埋めに近い。”の後に続く)

【文庫→四六判】当の本人の声が後ろから聞こえてきた。(p28)→背中へ当の本人の声が聞こえた

【文庫→四六判】酔ってんな新村。(p28-29)→随分酔ってんな新村。

【文庫→四六判】処置なしという顔で佐藤は彼の肩を取った。(p29)→仕方ないという顔で佐藤は彼の肩を取った。

【文庫→四六判】だが新村ははねのけ、ばかやろと言い返す。(p29)→だが新村はそれをはねのけ、ばかやろと言い返す。

【文庫→四六判】だが明日から新村は佐藤の下に付くことになる。(p29)→だが明日から新村は佐藤の下に就くことになる。


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