【ネタバレ】詠坂雄二『日入国常闇碑伝』(講談社ノベルス)「英雄蠅」検証第16回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『日入国常闇碑伝』も例に漏れず、雑誌掲載時から書籍化(新書)する際の加筆修正があるので検証を行っていこうと思います。
『日入国常闇碑伝』の「英雄蠅」検証第16回目です。
今回は戦いのあと群青具足が常闇で暴れていのかという理由、何故「英雄蠅」と名付けたのかの場面までになります。
以下ネタバレありますので作品読了後にご確認ください。
・【雑誌のみ】…文庫では削除。文庫のどこに書かれていたかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→雑誌】…雑誌ではこうだった。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
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「英雄蠅」#16
【新書→雑誌】・「さて。(p191上)→「さあて。新手の魔物。
【新書→雑誌】・光介は半分だけ頷いた。理は判った。判らないのは理で計れない部分のことだった。(p191上)→「……先生の乱心がこの蟲のせいだと?」「そういうことも考えられよう、というだけでして。先生が闇光集めに酔っていたというのも、それはそれで事実でしょうが―」
【新書→雑誌】・「殺された者の闇光は、殺した者に移るのか」「そういう場合もあるようです。闇光は生者の中にしか留まれず、ために器が死ぬと近くにいる者へ逃げ込むと言われております」「つまり闇光は集められる」「そう考えたところで、闇光が生き死にをどう判断しているのかは不明ですよ。(p191上-下)
→
「―生き物を殺せば、殺されたものの闇光は、殺した者に移るのだな」「ええ。闇光は生者の中にしか留まれず、ために器が死ぬと近くにいる者の中に逃げ込むと言われちゃいますが、それにしたって生き死にをどう判断してるのか、大半は殺した相手へ収まるようでして。行き倒れや病で死んだ者を看取っても、移る闇光はたかが知れている。またそうした闇光の移り先を失った屍体は歩骸になりやすいようです。
※雑誌では闇光は移る、と言い切っていますね。
【新書→雑誌】・闇光は、殺し殺される流れの中でのみ、息づくことができる動物と考える向きもあるようですがね」(p191上-下)→―闇光は、殺し殺される流れの中でのみ息づける別種の動物であると考える向きもあるようですがね」
【新書→雑誌】・「死骸は蟲にとって餌でしょう。(p191下)→「人の屍体は蟲にとっちゃ餌でしょう。
※人、でなくても動物や獣でも闇光が宿るから修正されたと考えられます。
【新書→雑誌】・あるいは(p191下)→あるいはこいつ自身、
【新書→雑誌】・寄ってきた蠅に卵を運ばせ、蠅が闇光に惹かれれば、蟲は次の宿主にありつけるという寸法です。(p191下)→寄ってきた蠅に卵を運ばせれば、蠅もまた闇光に惹かれるでしょうから。結果、闇光の強い者にとりつける。
【新書→雑誌】・そうした構図を維持しようと、蟲は宿主を助けるのでしょう。なかなか巧いやり方です」(p191下-192上)→とりついた宿り主を乱心させては屍体を作らせ、と同時、その躰を強くすることで手助けするわけです。なかなか巧いやり方でしょう」
【新書→雑誌】・英雄蠅とでも名付けましょうかと闇佐は言った。(p192上)→仮に英雄蠅とでも名付けましょうと闇佐は言った。
コメントなどありましたらお気軽にお願いします。
#17へ続きます。
次回もお付き合いいただければ幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。
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