【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件』(光文社文庫)検証第1回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
今回からは『遠海事件』をみていきます。
文庫と四六判の比較検証をおこなっていきます。
『遠海事件』は、詠坂雄二の代表作と言っていいでしょう。登場人物や固有名詞の他作品へのクロスオーバーが多く、他の作品を読む前に是非呼んでいただきたい一冊になります。
一部作品を挙げると『電氣人閒の虞』『亡霊ふたり』『ナウ・ローディング』短編「誠」などがあり、恐らく佐藤誠の影響を受けているであろう、などの細かいクロスオーバーを含めると、全作品の3分の2ほどにのぼります。
さて『遠海事件』は、
四六判:光文社(2008年7月)
文庫:光文社文庫(2014年2月)
と、文庫化されるまでに約6年間隔があるので、どのような訂正があるのでしょうか。
今回は「はじめに」の部分の前半をみていきます。
以下ネタバレありますので作品読了後にご確認ください。
・【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
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「はじめに」#1
【文庫→四六判】その通称も並んで多く、殺人鬼という最も簡素なもののほか、(p3)→その通称も並んで多くあり、殺人鬼という最も簡素なそれの他にも、
【文庫→四六判】鬼、冷血といった呼称も資料ではふんだんに散見される。(p3)→鬼、冷血といった呼称も資料にはふんだんに散見することが出来る。
【文庫→四六判】そこには明らかな間違いや胡蝶が含まれており、それにより生まれた、括弧付きの佐藤誠のイメージが、死刑執行から三年が経過した今もなお(p3)→そこには明らかな間違いや誇張が含まれてもおり、それより生まれた括弧付きの佐藤誠のイメージが、その死刑執行から丸三年が経過した今もなお、
※この項目に関しては後日詳しく紐解いていきます。
【文庫→四六判】一部で神格化されている佐藤誠の虚像を(p3)→さりとて一部で神格化されている佐藤誠の虚像を
【文庫→四六判】寄せられた反響に(p3)→読者より寄せられた反響に、
※必ずしも読んだ人のみの反響じゃなかったから、という理由で削除されたのでしょう。
【文庫→四六判】最低限これだけはと思う知識を(p3)→彼に関して最低限これだけはと思う知識を
【文庫→四六判】この数字は証言記録として残っている。(p4)→この数字は公式な記録として残っている。
【文庫→四六判】さらに付け加えるなら、(p4)→付け加えるなら、
【文庫→四六判】百人殺しなどと呼ぶ場合があるが、(p4)→百人殺しと呼ぶ場合があるが、
【文庫→四六判】多くの事件が不起訴あるいは無罪となっており、(p4)→多くの事件が不起訴あるいは無罪となっている計算であり、
【文庫→四六判】殺人罪で最も多くを殺した犯罪者といった呼び名も土台を失ってしまう。(p4)→殺人罪で有罪となった中で最も多くを殺した犯罪者といった呼び名も土台を失ってしまう。
【文庫→四六判】逮捕後も理性的に振る舞い、(p4)→逮捕後も一貫して理性的に振る舞い、
コメントなどありましたらお気軽にお願いします。
#2へ続きます。
次回もお付き合いいただければ幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。
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