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2020年5月18日月曜日

『遠海事件』「第一章」 #1

【ネタバレ】詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』「第一章」検証第1回


詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。

『遠海事件』は、詠坂雄二の代表作、主要キャラの佐藤誠が主人公で、他作品へのクロスオーバーが多く、他の作品を読む前に是非呼んでいただきたい一冊になります。

今回は第一章のはじめから水谷がBOOKCELLの詰め所まで連れて行かれた場面までをみていきます。


作品の核心に触れる虞もあるため作品読了後にご確認ください。




・【四六判のみ】…文庫では削除。削除部分が文庫のどこにくるかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→四六判】…四六判ではこうだった(カッコ内は文庫のベージ数です)。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。

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「第一章」#1

【文庫→四六判】言い逃れは利かないし、そんなつもりも彼女にはない。(p12)→言い逃れは利かないし、そんなつもりも後悔も彼女にはない。
※後ほど後悔しているから削除されたのでしょうか。

【文庫→四六判】怠そうに掌を天へ向ける彼女を、(p12)→怠そうに歩きながら掌を天へ向ける彼女を、
※双方の版で若干水谷育のイメージが違いますね。

【文庫→四六判】掲げた看板に『BOOKCELL』とネオン管をのたくらせている郊外型書店だ。(p12)→看板に『BOOKCELL』とネオン管をのたくらせた郊外型書店だ。

【文庫→四六判】壁から躰を離して服を払い、貧相な眼鏡面を見つめてやると、(p13)→壁から躰を起こして服を払い、顔を上げてその貧相な眼鏡面を見つめてやると、

【文庫→四六判】書店員は顔を真っ赤にして彼女のバッグを放り、水谷の髪を掴んで彼女の躰をまた外壁へと押し付けた。(p13)→書店員は顔を真っ赤にしてバッグを放り、水谷の髪を掴んで彼女の顔を外壁へ押し付けた
※のちのちの展開も含めて、少し暴力的だからでしょうか。

【文庫→四六判】今度は顔から壁に叩き付けられた。(p13)→壁から剥がされ、今度は顔から叩き付けられた。

【文庫→四六判】「少しはすまなそうな顔をしろや。あぁ?」(p13)→「少しはすまなそうな顔をしてみろや。あぁ?」

【文庫→四六判】彼女は更に二度外壁へ叩き付けられてから店舗裏へ引っ張られていった。(p13)→彼女は更に二度外壁へ叩き付けられ、店舗裏へ引っ張られた

【文庫→四六判】裏口から入った詰め所は暗く、狭く、汚かった。(p13)→裏口から入った詰め所は暗く、狭くて汚い

【文庫→四六判】書店員は彼女を引きずるように進み、(p13)→書店員は彼女を引きずりつつ進み

【文庫→四六判】そちらの汚なさも詰め所と大差ない。(p14)→その部屋の汚なさも、詰め所と大差はなかった。

【文庫→四六判】そうした色彩を必要とした時代を偲ばせる焦茶色のエアコンが唸りながら空気を冷やしていた。(p14)→そうした色彩を必要とした時代を偲ばせる焦げ茶色の馬鹿でかいエアコンが大袈裟な音を立てて空気を冷やしていた。



コメントなどありましたらお気軽にお願いします。
#2へ続きます。

次回もお付き合いいただければ幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。

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