【ネタバレ】詠坂雄二『日入国常闇碑伝』(講談社ノベルス)「英雄蠅」検証第7回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『日入国常闇碑伝』も例に漏れず、雑誌掲載時から書籍化(新書)する際の加筆修正があるので検証を行っていこうと思います。
『日入国常闇碑伝』の「英雄蠅」検証第7回目です。
今回は、四人のごろつきとの対決の場面から二人が常闇に入ったところまでになります。
以下ネタバレありますので作品読了後にご確認ください。
・【雑誌のみ】…文庫では削除。文庫のどこに書かれていたかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→雑誌】…雑誌ではこうだった。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
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「英雄蠅」#7
【新書→雑誌】・四人が激怒するのは(p172下)→四人が激高するのは
【新書→雑誌】・「素直に従えば怪我せず済んだのになぁ」凶刃四振りがきらりと閃く。光介はそれらとまったく違う流れの中、半身を前に出して小太刀の柄に手を添えた。(p172下)→「おとなしく差し出しゃ怪我せず済んだのになぁー」全員がほぼ同時に動き出し、凶刃四つがぎらりと閃く。光介はまったく違う流れの中、半身を前に出し、小太刀の柄にゆるりと手を添えた。
【雑誌のみ】・戦国の気風残る世で、かつ(新書p173上1行目“実力本位の”の前に入る)
【雑誌のみ】・多分に思惑を孕んだ文章であろうから鵜呑みにはできないし、峰木家家系図によれば光介は三男坊であり、剣術しか出世の手段がなかったという事情を窺うこともできるが―それはそのまま、光介の実力を疑う理由にはならないだろう。実力の裏付けあってこそのものであるに違いない。(新書p173上9と10行目の間に入る)
※峰木光介が三男であることはこの部分でしか書かれていないので貴重です。
【新書→雑誌】・剣技を自重するには及ばないでしょう。(p173下)→隠密だからと剣技を自重するには及ばないでしょう。
【新書→雑誌】・遠近感もなく、見つめていれば恐怖を吸われ、引き寄せられるような感覚さえ覚える。(p173下)→遠近感さえなく、見つめていれば全面が闇―すでに常闇に入っているような気にもなった。恐怖さえ吸い取られ、あたかも引き寄せられるような感覚さえある。
【新書のみ】・それともすべてを呑まんとしているのか。(p173下)
【新書→雑誌】・風景が曖昧になってゆく(p174上)→風景の何もかもが曖昧になってゆく
【新書→雑誌】・すぐさますべてが形容しがたい色彩へ変質した。(p174上)→すぐさますべてが真っ白な色彩へと変質した。
【新書→雑誌】・安心して下さいと闇佐の声が聞こえ、ようやく光介は我に返った。(p174上)→落ち着いて下さいという闇佐の声が聞こえ、ようやく光介は我に返ることができた。
【新書→雑誌】・色彩に慣れると風景が戻ってきた。(p174上)→言葉通り、白一色と感ぜられた世はじきに闇へと戻った。
【新書のみ】・姿形が歪なのだ。(p174上)
【新書→雑誌】・地より不可思議な突起物が腰の高さまで伸び並んで(p174上-下)→引き換えて、見知らぬものの姿は多かった。地よりぬぽっと不可思議な突起物が腰の高さまで伸び並び、
コメントなどありましたらお気軽にお願いします。
#8へ続きます。
次回もお付き合いいただければ幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。
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