【ネタバレ】詠坂雄二『日入国常闇碑伝』「雨鉄炮」検証第18回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『日入国常闇碑伝』も例に漏れず、雑誌掲載時から書籍化(新書)する際の加筆修正があるので検証を行っていこうと思います。
『日入国常闇碑伝』の「雨鉄炮」検証第18回目です。
今回は敵方との戦いが終わったあとからその敵と対面した場面までになります。
以下ネタバレありますので作品読了後にご確認ください。
・【雑誌のみ】…文庫では削除。文庫のどこに書かれていたかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→雑誌】…雑誌ではこうだった。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
「雨鉄炮」#18
【新書→雑誌】・銃身が跳ねて白煙がぶわと舞う。応じる敵方の銃声は―ない。(p153下)→銃身が跳ね、白煙が漂った。敵方の銃声は―止んだままだった。
※この違いは、敵はもう反撃してこないと確信していたのか、まだ反撃の不安があるかもという違いがあると思われます。
【新書→雑誌】・闇佐の問いに答えずテナガは立ち上がった。そしてカタメの死骸のほうを見やると、手を合わせ隻眼を瞑った。(p153下)→答えずテナガは立ち上がった。改めてカタメの死骸の方を見ると、手を合わせ隻眼を瞑る。
【新書のみ】・やはり敵の銃声は続かない。(p154上)
※新書ではもう大丈夫だろうと確信したのだと考えられます。次の項目の訂正からもうかがえます。
【新書→雑誌】・闇佐は立ち上がり、テナガの手を引きつつ小屋を出た。(p154上)→カタメの役は闇佐が引き継ぐしかないようだった。テナガの手を引き、充分用心しつつ小屋を出た。
【新書→雑誌】・結晶した焔硝とその原材料が燃える臭いなのだろう。(p154上)→焔硝が結晶した木板と、その材が燃える臭いなのだろう。
【雑誌のみ】・焔硝が炎を大きくしているのか。それとも―(新書p154上8と9行目の間に入る)
【新書→雑誌】・瀕死だ。(p154上)→生きているが、瀕死だ。
【新書→雑誌】・被弾したのは胸。致命傷である。絶命は時間の問題だ。(p154上)→弾は胸に受けているようだった。普段なら即死してもおかしくない場所だが、体力のために生きながらえているようだ。
【新書→雑誌】・また両眼も揃っていた。鉄炮は離れた場所に放り捨てられている。(p154上)→両の眼は揃っている。手にあったはずの鉄炮は、今、離れた場所に放られていた。
【新書→雑誌】・隻眼の放ち手ははいと頷くと、(p154下)→隻眼の放ち手は頷き、
【新書→雑誌】・そして冷え切った口振りで問う。(p154下)→近場が見えぬはずのテナガは、冷え切った口振りで問う。
【新書→雑誌】・放己と呼ばれた男は笑いを零した。(p154下)→放己と呼ばれた男はいよいよ笑いを零した。
【新書→雑誌】・雨鉄炮退治に向かった者が、どうして自分たちと対峙するのか。(p154下)→自分たちに先行し雨鉄炮退治に向かったはずだ。こうして対峙すること自体が解せぬ。
コメントなどありましたらお気軽にお願いします。
#19へ続きます。
次回もお付き合いいただければ幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。
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