【ネタバレ】詠坂雄二『日入国常闇碑伝』「雨鉄炮」検証第10回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『日入国常闇碑伝』も例に漏れず、雑誌掲載時から書籍化(新書)する際の加筆修正があるので検証を行っていこうと思います。
『日入国常闇碑伝』の「雨鉄炮」検証第10回目です。
今回はテナガが鷲らしきものを打ち殺したあとから、常闇に到着し、入る直前までの場面になります。
以下ネタバレありますので作品読了後にご確認ください。
・【雑誌のみ】…文庫では削除。文庫のどこに書かれていたかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→雑誌】…雑誌ではこうだった。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
「雨鉄炮」#10
【新書→雑誌】・テナガの小屋の近くに積んであった鴉たちの死骸と同様に。(p142上)→小屋の近くで見た鴉の死骸と同様に。
【新書→雑誌】・テナガは口を閉ざしたまま、カタメも成果を誇るではない。共に当然と言わんばかりである。(p142上)→どこまで狙ったものか、テナガは口を閉ざし、カタメも言を重ねて誇るでもない。当然の結果を視たと言わんばかりである。
【新書→雑誌】・それにしたって枝に留まる鳥を狙うものだ。(p142下)→それにしたって止まった鳥を狙うものだ。
【新書→雑誌】・それは頼もしいことでと応じつつ、(p142下)→それは頼もしいことで軽く応じながら、
【新書→雑誌】・装塡と射撃が分離しているため射手は狙いに集中でき、銃身上に眼が置けることでより直感的な照準も見出だせるからだ。(p142下)→装塡によって射手は狙うことに集中ができ、銃身上に眼が置けることで、より直感的な狙いが適うからだ。
【新書→雑誌】・それにしても闇の業に近く感じられる。(p143上)→それにしても神業、闇の業にそれは近く感じられる。
【新書→雑誌】・半欠けの月を眺めつつ三人は休んだ。(p143上)→天に半欠けの月を眺めつつ、三人は休むことにした。
【新書→雑誌】・そして昼前、(p143上)→出発してしばらくし、
※新書でも雑誌でも昼前に常闇へ到着したが雑誌は、出発する時間が遅かったのか、という考えもありますね。
【雑誌のみ】・何度も出入りしてきた闇佐も、外から眺めた常闇景色には慣れずにいる。眼にするのも初めてだというカタメとテナガはしばらく黙っていたほどだ。(新書p143下4と5行目の間に入る)
【新書→雑誌】・常闇へと通じる道に人影はない。(p143下)→速度を重視し、選んだ裏街道、それでなくとも常闇に通じる道に人の影はなかった。
【新書→雑誌】・常闇との境はどこも動物の姿が希薄で、草木の繁茂も遠慮がちだ。(p143下)→常闇との境となる土地はどこも動物の姿が希薄なのである。草木の繁茂もどこか遠慮がちだ。
【新書→雑誌】・常闇に陽射しを遮られるためというだけではない理があるのかもしれない。(p143下)→陽射しを得られぬため、というだけではない何かがあるのかもしれぬ。
【新書→雑誌】・速度を重視し裏街道など辿れば、(p143下)→裏街道など辿れば
#11へ続きます。
次回もお付き合いいただければ幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。
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