【ネタバレ】詠坂雄二『日入国常闇碑伝』「雨鉄炮」検証第12回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『日入国常闇碑伝』も例に漏れず、雑誌掲載時から書籍化(新書)する際の加筆修正があるので検証を行っていこうと思います。
『日入国常闇碑伝』の「雨鉄炮」検証第12回目です。
今回は妖魔という定義についての解説部分から、三人が谷底の村落へ向けて歩いているところまでになります。
※お気付きのかたもいらっしゃるかと思われますが、「雨鉄炮」の加筆訂正は、他の連作短編とくらべて一番多いです。
以下ネタバレありますので作品読了後にご確認ください。
・【雑誌のみ】…文庫では削除。文庫のどこに書かれていたかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→雑誌】…雑誌ではこうだった。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
「雨鉄炮」#12
【新書→雑誌】・その中でさえ特異な存在を、常闇奉行では妖魔と呼び習わしていた。(p145上)→その中でさえ特異に感じられる存在を、常闇奉行では仮に妖魔と分類していた。
※仮に、となっていたのは、雑誌版の時代が常闇発生から十数年後だったからかと思われます。詳しくは以前のブログ「雨鉄炮」#1を御覧ください。
新書では常闇発生から二十年余年ですので、その間の期間に妖魔の分類が(ある程度?)確立したのか、自然と妖魔と呼ぶようになったのか…。詳しくは以前のブログ「雨鉄炮」#1を御覧ください。
【雑誌のみ】・闇佐はその感覚で、まず周囲に不穏なものはないと確信する。闇光はそこかしこに感じられるのだが、どれも蟲や獣のたぐいと断じることができるものだった。………(新書p145下2と3行目の間に入る)
【雑誌のみ】・闇に呑まれたせいで妖魔となってしまったのだ―と。(新書p145下7と8行目の間に入る)
【新書→雑誌】・背負う鉄炮も闇光を放つことがなく、常闇の中では目立たないせいもあるだろうが―(p145下-146上)→カタメの背負う鉄炮は闇光を放つことがないため、常闇で目立たないせいもあるだろうか。
【新書→雑誌】・それぞれの道理に従い存在しているからだろう。(p146上)→それぞれの道理に沿っているからであろう。
【新書→雑誌】・発せられた声は、(p146上)→意志をもって発せられた声は、
【雑誌のみ】・そこは察せられる。(新書p146下9行目“帰らなかったのだろう。”の後に続く)
【雑誌のみ】・無表情のままだ。(新書p146下15行目“様子ではない。”の後に続く)
【新書→雑誌】・目指す村は、その底に見えていた。(p146下-147上)→その底に村落が見える。
【新書→雑誌】・村に留まる闇光が濃いためであった。(p147上)→村落それ自体が放っている闇光が濃いためである。
【新書→雑誌】・谷の底を目指して三人は下ってゆく。(p147上)→村落に向かい下ってゆく。
【新書→雑誌】・まとわりつく湿気は、ほとんど泳いでいるような錯覚を感じさせる。(p147上)→まとわりつく雨は、ほとんど泳いでいるような錯覚を闇佐に感じさせた。
【新書→雑誌】・「一発あればテナガ様には充分です」(p147上)→「それだけあればテナガ様には充分です」
コメントなどありましたらお気軽にお願いします。
#13へ続きます。
次回もお付き合いいただければ幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。
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