【ネタバレ】詠坂雄二『日入国常闇碑伝』「雨鉄炮」検証第11回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『日入国常闇碑伝』も例に漏れず、雑誌掲載時から書籍化(新書)する際の加筆修正があるので検証を行っていこうと思います。
『日入国常闇碑伝』の「雨鉄炮」検証第11回目です。
今回は、常闇の狂気についての解説部分から闇佐がテナガの闇光に驚いている場面までになります。
以下ネタバレありますので作品読了後にご確認ください。
・【雑誌のみ】…文庫では削除。文庫のどこに書かれていたかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→雑誌】…雑誌ではこうだった。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
「雨鉄炮」#11
【新書→雑誌】・闇佐はこれまで幾人もの人傑悪党が闇に呑まれ、正気を失う姿を見てきた。(p143下-144上)→闇佐はこれまで幾十人もの英傑、悪党が闇に呑まれる姿を見てきたのだ。
【雑誌のみ】・常闇で目の当たりにするものと言えば異形の獣が多いのだが、それよりも、元は同じ人だったものが闇に呑まれ、人でいられなくなってしまっている姿の方が心身に堪えるのである。(新書p114上1と2行目の間に入る)
【新書→雑誌】・「根も葉もない話です。(p144上)→「根も葉もない。
【新書→雑誌】・そうしたことが、異形の蠢く常闇では(p144上)→それが、異形たちのさまよう常闇では
【新書→雑誌】・「目的は雨鉄炮退治でしょう。(p144上)→「二人の目的は雨鉄炮退治なのでしょう。
【雑誌のみ】・まるで最初からそのようであったかのように。(新書p144下3と4行目の間に入る)
【新書→雑誌】・しかしどう違うのか言葉で表現しがたい空間だった。(p144下)→しかしどう違うのか判らぬ世界だった。
【新書→雑誌】・その光が景色を照らしているからだ。(p144下)→その光のために景色が照らされているからであろう。だがそれだけではない。
【新書→雑誌】・内に微かな炎が宿り、躰が行灯になったかのようだ。(p144下)→躰の内より照らしのぼるようにも見える。微かな炎のようでもあった。
【新書→雑誌】・闇光と呼ばれるそれは、常闇において生物などが放つ光だった。(p144下)→闇光などと呼ばれるそれは、常闇で生きるものすべてが放つ光であった。
※刀冶朗は刀に闇光を宿すことができたから、などの理由で上記のように訂正されたのでしょうか。
【新書→雑誌】・だが言葉を失わせたのはその隣、テナガが放つ闇光のほうである。尋常な輝きではない。(p145上)→とりわけてどうということはない。あるいはカタメだけであれば感嘆の声も漏らせたかもしれぬが、闇佐には声を失う別の理由があった。テナガの闇光が尋常のものではなかったのだ。
【新書→雑誌】・通常の闇光は躰の表面、肌より一寸二寸ばかりに光衣をまとうように見えるものだが、テナガの闇光は強く、彼女の輪郭を潰し、まるで闇光の松明のように見せている。(p145上)→通常、躰の表面に沿って肌より一寸二寸ばかりに光を感じるものだが、テナガの闇光はあまりに強く、彼女の輪郭を潰し、まるで闇光の炎のように見せてしまっている。
コメントなどありましたらお気軽にお願いします。
#12へ続きます。
次回もお付き合いいただければ幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。
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