【ネタバレ】詠坂雄二『日入国常闇碑伝』「雨鉄炮」検証第16回
詠坂氏は初出時から書籍化、文庫化される際に手を加えています。
『日入国常闇碑伝』も例に漏れず、雑誌掲載時から書籍化(新書)する際の加筆修正があるので検証を行っていこうと思います。
『日入国常闇碑伝』の「雨鉄炮」検証第16回目です。
今回は、屋根の上の敵との戦いの場面から、闇佐が屋根の上に敵がいることに疑問を感じている場面までになります。
以下ネタバレありますので作品読了後にご確認ください。
・【雑誌のみ】…文庫では削除。文庫のどこに書かれていたかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫書き下ろしです。
・【文庫→雑誌】…雑誌ではこうだった。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。重要な部分は太線にしています。
「雨鉄炮」#16
【新書→雑誌】・遠方に、ここと同じくらいの大きさの小屋があった。(p151上)→壁の破れより見える遠方に、やはり同じ程度の大きさの小屋があるのだ。【雑誌のみ】・その、屋根の上に敵はいる。寝そべているので姿は小さい。だが銃声より一瞬早く炎が見えたのだ。見えぬ弾よりなお早く景色が伝わるのは世の道理。その理が闇佐に味方してくれたのだった。(新書p151上13行目“小屋があった。”の後に続く)
【新書→雑誌】・その屋根に敵はいる。屋根にいながら雨風に遮られず鉄炮を放ち続けているのだ。(p151上)→敵は屋根の上にいる。それでいて雨風に遮られることなく鉄炮を放ち続けている。―放ち続けられている。
【新書→雑誌】・敵がいる小屋の闇光は強い。眼でなく心にて感ずる強さの中に、人らしき揺らめきの闇光も感じられた。妖魔ではやはりないようだ。(p151上)→敵がいる小屋の闇光も、思えば強い。眼でなく心にて感ずる強さに、人である芯も感じられた。妖魔ではやはりないか。
【新書→雑誌】・「カタメの右手はどこにある」(p151下)→「死骸でよい。カタメの手はどこにある。右手じゃ」
【新書→雑誌】・近場が見えぬという妖眼はよほどであるらしい。(p151下)→近場が見えぬというのはよほどであるらしい。
【新書→雑誌】・それを両手で掴んで、テナガは全体をさする。指の形状を確認するように。(p151下)→それを両手で掴み、テナガはさする。まるで形状を確認するように。
【新書→雑誌】・敵はと言いかける闇佐にテナガは言う。(p151下)→「―敵は」
【新書→雑誌】・壁の破れより窺っての言か。(p152上)→壁の破れより窺ったようだった。闇佐は問う。
【新書→雑誌】・鉄炮に限りがあるというのは、予めカタメが込めておいた三挺のことを言っているのだろう。(p152上)→撃てる鉄炮とは予めカタメが込めておいた三挺のことだろう。
【新書→雑誌】・これだけの湿度では、(p152上)→これだけの高湿度では、
【新書→雑誌】・小屋の中で物陰から放ったほうがより安全だろうし、何より雨風も防げる。(p152下)→小屋の中から撃てば向こうはより安全なはずだろう。今、まさに我らがしている通り。また、雨風も凌げる。
【新書→雑誌】・確かに、高所に陣取るは兵法の定石であるが―(p152下)→高い場所に陣取るは鉄炮撃ちの鉄則ではあるが―
コメントなどありましたらお気軽にお願いします。
#17へ続きます。
次回もお付き合いいただければ幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。
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