詠坂雄二『インサート・コイン(ズ)』内の短編「残響ばよえ~ん」の検証第1回目です。
今回の短編は柵馬朋康の初恋の話になります。
前回と同じように、
・【雑誌のみ】…文庫版では削除。文庫版のどの辺りに入るかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫版書き下ろしです。
・【文庫→雑誌】…文庫の文が雑誌ではこうだった。
というように書いていき、必要なところは解説も加えています。
ネタバレもありますので、作品読了後にご確認ください。
「残響ばよえ~ん」#1
【雑誌のみ】・今こうしてつらつら文章にしているいちばんの理由は仕事だからなのだけど、ゲーマー相手に恋愛の想い出を語れなんてオーダーをする編集部の残酷さをあげつらったって始まらない。開き直ってギャルゲーについてでも語ろうかとも思ってけれど、それはすでに前号で腕まくり野々村さんがやっているので、僕は現実の話をするほかないという事情もあったりする。(文庫p57の6行目の後に続く) ※“腕まくり野々村さん”は文庫には出てこず、四六判と雑誌でのみの登場になります。彼についての情報も上記のものしかありません。
【文庫→雑誌】・従わないどころか返事もせず、無言でもぐもぐ食べてしまったり。(p57-58)→従わないどころか返事もせず、まずそうにもぐもぐと食べてしまったり。 ※ミズシロの行動について。文庫のみ“無言で”となり、四六判と雑誌版は“まずそうに”です。
【文庫→雑誌】・当時は平日の登下校はもちろん、日曜祝日まで終日ジャージで通していたからだ。僕がとりわけ面倒くさがりだったわけじゃなく、母校ではそれが普通だったのである。(p61)→授業中や平日放課後はおろか、日曜祝日の、学校とは関係ない日でもジャージで通していたからだ。僕の母校ではそれが当然だったのである。 ※文庫版の修正で、授業中は制服を着ていた、ということになったのでしょうか。
【文庫→雑誌】・そうでなくともクラスで浮いている女子なのだ。(p62)→相手が女だから侮っていたのか、単に気まずかっただけかもしれない。クラスでも浮いている女子なのだ。
【文庫→雑誌】・女子相手にゲーム話をするような空気の読めなさは、当時の僕にしても持ってなかったということだ。(p62-63)→女子相手にゲーム話をするような空気の読めなさは、当時の僕にしても持ってなかったということにしておいて欲しい。
【雑誌のみ】・そのビデオ屋を選んだのも、ワンプレイが五十円という理由があった。(文庫p64の10行目“百円の計算だ。”と“少ない小遣いをはたいて”の間に入る)
【文庫→雑誌】・ボタンがひとつしかなく左回転しかできない操作で、(p65)→レバー下で回転、ボタンで強制落下という今では失われた操作方法で、 ※セガ版テトリスの操作について
【文庫→雑誌】・ゲームにつきあってくれるだけではなく、プレイの巧い異性となると本当に貴重だ。(p65)→本誌の読者には言うまでもないことだが、ゲームにつきあってくれる異性は貴重だ。
【雑誌のみ】・そのしんどそうな表情は、今でも覚えている。(文庫p68の2行目の後に入る)
【文庫→雑誌】・コインを投入するとSEが鳴り、(p69)→五十円玉を投入するとSE鳴り、
【文庫→四六判→雑誌】・ぷよぷよにまつわる想い出をというオーダーで書いた、とりとめのない文章である。(p74)→ゲームにまつわる恋愛の想い出というオーダーで書いた、とりとめのない文章である。(p69)→恋愛の想い出というオーダーで書いた、とりとめのない文章である。 ※依頼内容が恋愛の想い出から、最終的にぷよぷよにまつわる想い出に変更されています。初恋の話を“何も思い浮かばず、しょうがなく書いた”(p74)とより強調されるからでしょうか。
【文庫→雑誌】・黒や白は識別しやすいが、それだけにほかの色となじみにくい。(p82)→色を色相のテーブル上の一点として捉えれば、黒も白も極端な点となり、他の色と馴染みにくい(それだけに識別しやすい)。
#2へ続きます。
次回もお付き合いいただければ幸いです。ありがとうございました。
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