詠坂雄二「もう1ターンだけ」検証
今回から『インサート・コイン(ズ)』の続編的な『ナウ・ローディング』をみていきます。短編「もう1ターンだけ」第1回目です。
柵馬が母校の特別講師で教壇に立つことと、元プレスタ編集長から執筆の依頼を受けます。
この短編「もう1ターンだけ」と同時期に『ドゥルシネーアの休日』内で連続爆弾テロ事件が起こっています。興味のある方はこちら時系列表を参照ください。
ネタバレがありますので作品読了後にご確認ください。
・【雑誌のみ】…文庫版では削除。文庫版のどこに書かれていたかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫版書き下ろしです。
・【文庫→雑誌】…文庫の文が雑誌ではこうだった。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。
「もう1ターンだけ」#1
【文庫→雑誌】・それ以上を期待するのは高望みだ。当時の俺はそう考え、辛うじて通い続けていた。(p18)→それ以上を期待するのは高望みだ。当時の俺はそう納得して通っていた。
【文庫→雑誌】・書いた当人を知っていれば少しは面白がれるのだろうけど、見覚えのある名前も出てきたりはしなかった。(p29)→書いた当人を知っていれば少しは面白がれるのだろうが、見覚えのある名前に出くわしても顔のほうが浮かばず、想い出らしい想い出を連想することもないのである。当時、クラスメイトとそれなりに話はしていたはずなのだが。
※ひとつ上の修正のように、辛うじて通い続けていたと修正されているので、ろくにクラスメイトと話したことも無く通ってたというように感じます。そして辛うじて通っていた中で、人生最大の奇跡(流川との出会い)というのがより強調されるというのも修正理由のひとつだと感じます。
【文庫→雑誌】・添削したくなるだけで、(p29)→何にしても
【文庫→雑誌】・むず痒くなることさえなく、じきに俺は裁断作業を機械的にこなすだけになった(p29)→じきに俺は宛名と中身を確認して裁断する作業を機械的にこなすだけになった。
※上記で見覚えのある名前が出てこないと修正されているなら、宛名を確認せず機械的になっても問題ないだろう、というこでしょうね。
【文庫→雑誌】・それを見て二年前の夏、世間から消えた恩師のアパートで出くわした文章を思い出したのは、(p30)→ふと二年前の夏、恩師のアパートで出くわした文章を思い出したのは、 ※「インサート・コイン(ズ)」参照
【雑誌のみ】・ゲームからの剽窃という指摘には及ばない。こいつはこの文章に何かを託したのだ。(文庫p32の6行目の後に入る)
【雑誌のみ】・そんな想像ができるなら、売文で食べていこうなんて本気で思わなかっただろう。(文庫p33の1行目の前に入る)
【文庫→雑誌】・タイムレターは、ろくに文章を書いたこともない連中に書かせるための苦肉の策だった可能性もある。(p34)→いや、やる気が出たとして、義務教育の内容を修了済みとした講義ばかりを組むわけにもいかない。それこそ小学生の卒業式で書かせるようなタイムレターさえ、ひょっとしたら当時はそれなりに硬貨を期待されたアイデアとして採用されたのかもしれない。
【文庫→雑誌】・俺が通っていた時とは雰囲気も違うのだ。(P34)→俺の時とは何もかも違う。
【文庫→四六判→雑誌】・今の生徒の姿から、かつての生徒の想いを過剰に想像してしまったからかもしれない。(p34)→今の生徒の姿から、かつての生徒を似たもののように想像してしまったからかもしれない。(p31)→今の生徒の姿からかつても同じだったろうと想像し、手紙の文面に宿る情熱を無下にすることが億劫だったからかもしれない。
【文庫→雑誌】・「―そうですか。ええと、どこを疑問に思われましたか」(p35)→そのせいで、ああええ、と変な返事になってしまう。もちろんいいですよ。「どこが疑問に思われましたか」
【文庫→雑誌】・その分野における流行の変遷などから始めてはどうでしょう」(p36)→当然その分野における価値観の変遷などから始めるのがいいと思いますが」
【文庫・四六判→雑誌】・二年前、いちばん長い付き合いだったゲーム誌が休刊になってから、なんとなく避けるようになっていたのだ。(p37)→二年前、いちばん長い付き合いだったゲーム誌が休刊になってから、俺は意識してゲーム関連の仕事を避けていた。
※二年前から特別講師になるまで、プレスタの休刊→流川の収監→宇波の自殺と立て続けに大きな出来事があったので、雑誌掲載当初はマイナス的な感情で意識して避けていた、となったのでしょうか。しかし、前作「そしてまわりこまれなかった」(宇波の自殺)で“人生を続けていける”と前向きになっていたので、書籍化の際このように修正されたのでしょうか。
【文庫→雑誌】・もちろんビデオゲームは今も好きなのだが―それだからこそ。(p37)→雑誌では文庫p37の1行目“二年前、”の前に書かれている。
【雑誌のみ】・今では雑誌よりもネットの需要が多い。特にビデオゲームはネットと親和性も高く、営業をかければ依頼が貰えるだろうと判っていながら。(文庫p37の2行目と4行目の間に入る)
#2へ続きます。
次回もお付き合いいただければ幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。
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