詠坂雄二『インサート・コイン(ズ)』「穴へはキノコを追いかけて」検証
・詠坂雄二作品は、書籍化する際や文庫化する際に、必ず加筆訂正があります。文庫末尾に「加筆訂正をした」など明記している作家もいますが、詠坂氏はそういうことを書いていませんが、加筆訂正はたくさんあります。
・詠坂作品を読んでいると、初出のみで消え去った出来事もちらほらあり、気になって仕方ないので調べました。
・今回から何度かにわけて『インサート・コイン(ズ)』内の作品の「ジャーロ」掲載時と文庫の違いをみていきます。
初回は「穴へはキノコをおいかけて」です。
・細かい訂正箇所がたくさんあるので、大きな変更点のみ載せています。
・雑誌のみでしか載っていない設定などあり、詠坂作品が好きな方には興味深いと思います。
・四六判も存在しますが、文庫版が最終形とし、雑誌と文庫のみの対比にしました。ただし、重要かと思われる部分は、四六判も参照し、あわせて記載します。
・ネタバレもありますので、未読の方は作品読了後にご確認ください。
・【雑誌のみ】…文庫版では削除。文庫版のどこに書かれていたかも記載しています。
・【文庫のみ】…文庫版書き下ろしです。
・【文庫→雑誌】…文庫の文が雑誌ではこうだった。
というように書いていき、必要なところは解説も加えます。
ネタバレがありますので作品読了後にご確認ください。
「穴へはキノコをおいかけて」#1
【雑誌のみ】挿絵は中原青餅氏です。
【雑誌のみ】・誰の言葉だったか、問題を発見する能力は、問題を解決する能力よりも素晴らしいというのを思い出す。(文庫p10の13行目の後にあった(以下同様))
【文庫→雑誌】・俺が見たのは岩場にあった鮮やかな色の何か、惨劇を思わせる赤黒い染みである。(p12)→俺が見たものは、山の中、岩場にぶちまけられた鮮やかな汚れ、惨劇を思わせる赤黒い染みだった。
【文庫→雑誌】・そこで接世書房発行のゲーム誌『Press start』は編まれているのだった。(p12)→そこで、接世書房発行のゲーム誌『press start』、通称プレスタは作られているのだった。
【文庫→雑誌】・「そこをなんとか、ベテランの流川さんにビシッとメインを張ってもらいたいわけなんだ。(p13)→「そこを何とか、業界歴も二十年になる流川さんにビシッとメインを張って貰いたいわけなんだよ。
【文庫→雑誌】・柵馬君(p13)→柵馬さん ※流川が柵馬のことを君付けするのはこのときと、流川が逮捕前に残した文章に『柵馬君へ』と遺しただけになります。
【雑誌のみ】・自分の署名がある記事が紙面に載ることをまだ十分に愉しめていた。(文庫p13の12行目の後に)
【文庫→雑誌】・次は九月発売ですし(p13)→次は十月発売ですし ※作中は2005年の6月で、もし10月発売なら、8月発売分の「プレスタ」の紙面はできているのか?になり、おかしいための修正かと思います。「プレスタ」は隔月誌です。
【雑誌のみ】・食欲の秋と絡めてー」(中略)流川さんは鈍い返事だった。 ※食欲の秋と絡めてキノコ鍋などを柵馬が提案すると、「ファミ通でやりそう」と流川が言う内容。
【文庫→雑誌】・痩せ形で陰鬱な風貌はいかにも怪しげ。(p15)→流川映ー。痩せ形で青白い肌という鬱病めいた風貌はいかにも怪しげ。
【文庫→雑誌】・年齢は不惑過ぎ。(p15)→年齢不詳だけど、察するに四十代も恐らく半ば。
【文庫→雑誌】・そんな流川映は、(p15)→そんな名実共にオッサンであるベテランライターは、
【文庫→雑誌】・たとえば流川さんのようにと考え、勇気をもらうこともある。(p16)→たとえば流川さんのように、と。
コメントなどありましたらお気軽にお願いします。
次回#2へ続きます。
お付き合いいただければ幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。
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